不漁ジャム

しじみの香りの入浴剤が砂の中に埋もれている。

はさみとナイフとカッターと。

朝目が覚めると、目の前に空があった。手が届きそうな距離、そんなはずもなくて。

朝目が覚めると、腕がなくなっていた。キミにはもう届かない、それに意味はなくて。

朝目が覚めると、世界に独りぼっちだった。手を伸ばしても、そこにはなにもなくて。

朝目が覚めると、そこは棺桶のなかだった。ふたを開けようとしても、やっぱり届かない。

 

どうして

どうして

どうして

どうして

 

もう死んじゃいそうってみんな言うけど、どうせ死なないんでしょ。

きっとどうしようもないってみんないうけど、また今日も嗤ってるんでしょ。

私には何もないってあなたは言うけど、私よりよっぽど幸せそうじゃないか。

 

なんで

なんで

なんで

 

今、この瞬間に、どれだけの人が生まれ、どれだけの人が意味もなく生をやめるのか。

わかっている気もするけれど、その半透明な暗闇は私を一歩も入れてはくれない。

こんな理不尽な世界に、幸せを感じている自分は異常なのかもしれない。

 

独りの少女はそうつぶやいて、静かに砂の奥へともぐっていった。